400年間海中にあった真珠の構造とアミノ酸組成
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概要
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Bermuda島近海の約400年前の難破船から採集された真珠を材料として,その構造とアミノ酸組成を調べ,現在のものと比較した.難破船からの真珠は真珠光沢がなく,色は灰色から褐色である(Plate I-1).研磨切片をみると天然真珠特有の同心円状の構造を示し(Plate I-2),さらに微細構造を観察するとアラレ石の結晶とコンキオリンが交互に積み重ねられた真珠層特有の構造を示す(Plate II-4).真珠層中には多くの細い穿孔がみられるが,これは穿孔性の微生物によって形成されたもので,それによって有機質に顕著な変化が起きたと考えられる(Plate I-5, 6, II-1, 2).結晶(アラレ石)には変化はほとんどみられない.蛋白質の全量は,現在の正常な真珠に比べて約10分の1に減少し(Table 1),微細構造についても変化が著しい(Plate III 1〜6).こうした有機質部分の変化によって真珠光沢が消失したと考えられる.アミノ酸組成はスでに多く報告されている化石貝殻の場合によく似ている(Table 2).また,アミノ酸の中で特に量が多く,コンキオリン中の繊維性の蛋白質の主成分と考えられているグリシンとアラニンは現在の真珠層に比べて減少が著しい.
- 地学団体研究会の論文
- 1975-03-20
著者
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中原 晧
The Bermuda Biological Station For Research:the University Of Texas Dental Branch
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中原 晧
明海大学歯学部
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BEVELANDER Gerrit
The Bermuda Biological Station for Research
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Bevelander Gerrit
The Bermuda Biological Station For Research:the University Of Texas Dental Branch
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