土壌孔隙組成を用いた森林の保水容量の推定とその要因解析
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概要
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森林の水源涵養機能を土壌孔隙組成による保水容量特性より推定した。大分県下246林分を対象に計905個の400cc円筒試料を採取し,粗孔隙保水容量,(pF0〜2.7相当),中・小孔隙保水容量(pF0.6〜2.7相当)及び大孔隙保水容量(pF0〜0.6相当)を深さ1mまでの土層深と孔隙率の積により算出した。粗孔隙保水容量は雨水の貯留と排水のポテンシャルを,中・小孔隙保水容量は水資源として有効な雨水の貯留を,そして大孔隙保水容量は土中への雨水の誘導と土壌中での排水のポテンシャルをそれぞれ指標する機能と位置づけた。粗孔隙保水容量,中・小孔隙保水容量及び大孔隙保水容量の全林分平均(土標準偏差)は,それぞれ339.6(±75.9)mm,243.6(±56.9)mm,96.9(±40.5)mmであり,全体的に広葉樹林で保水容量が大きく,原野では小さかった。各保水容量を目的変数として,林種,林齢,土壌母材などの5外部環境要因及び容積重,土性などの3土壌特性要因を用いて数量化I類による要因解析を行った。この結果,土壌特性要因の効果が大きく,保水容量に対し主体的に影響を与えていることがうかがわれた。一方,外部環境要因では,副次的であったが,広葉樹林が針葉樹林に比べ保水容量が多い傾向にあること,加齢により保水容量が増加することなどの結果が得られた。これは,森林に対する人偽的な営為,すなわち土壌孔隙に配慮した森林の取り扱いによって,水源涵養機能の増進は可能であることを示唆している。
- 森林立地学会の論文
- 2002-12-25
著者
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