新潟県直江津港沖で採捕された浮遊遠洋性アミダコ卵巣の組織像 : 海産無脊椎動物の生殖腺の成熟に関する研究-XIII-
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概要
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浮遊遠洋性の珍蛸アミダコ(♀)が, 2004年11月から2005年2月下旬にかけて,上・中越地方を中心に新潟県沿岸へ漂着したり捕獲されたりして,34個体が記録された.これらの中で,2月15日に掬われ,上越水族博物館へ収容され,18日に死亡した全長53cmの個体を10%フォルマリンで,次いでブアン氏液で固定し,卵巣・卵管の組織標本を作成して,観察した.卵巣重量は40g,抱卵数は60,000個以上であった.卵巣は中央に卵巣腔があり,多数の包嚢からなり,嚢内には様々の発育段階の卵巣卵(非同時発生型)が存在していた.若い卵母細胞は,それぞれ結合組織性の薄膜(層板)に付着していた.初期の卵母細胞には,円形の核(生殖胞)が明瞭であるが,発育が進むと卵は長楕円形となり,卵胞上皮が随所から陥入し始め,複雑に入り組み,卵黄形成が盛んとなる.さらに成熟が遊むと,卵母細胞は大きく球状化して,最大径1.2 mmに達する.卵膜には放射線帯,卵胞膜,莢膜の分化が明瞭となり,卵黄は板状化する.近位卵管内壁の粘膜は高く,複雑にひだ打っているが,遠位卵管壁は厚い結合組織と筋肉層で覆われ,内壁の粘膜は低く,ひだ打ちの程度は小さかった.浮遊遠洋性アミダコ卵母細胞の成熟過程は,沿岸性のマダコや深海性のメンダコ類などと変わらず,多回産卵を行うと推定された.
- 2007-02-28
著者
-
本間 義治
Division Of Microscopic Anatomy And Bioimaging Department Of Cellular Function Niigata University Gr
-
牛木 辰男
新潟大学 大学院医歯学総合研究科顕微解剖学分部
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牛木 辰男
Division Of Microscopic Anatomy And Bioimaging Department Of Cellular Function Niigata University Gr
-
牛木 辰男
新潟大学医学部第三解剖
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武田 正衛
Division of Microscopic Anatomy and Bioimaging, Department of Cellular Function, Niigata University
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中村 幸弘
Johetu City Aquarium
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武田 正衛
Division Of Microscopic Anatomy And Bioimaging Department Of Cellular Function Niigata University Gr
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牛木 辰男
Division Of Microscopic Anatomy And Bio-imaging Department Of Cellular Function Niigata University G
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