シリヤケイカの繁殖行動
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概要
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水槽内でのシリヤケイカSepiella japonicaの繁殖行動を観察した。シリヤケイカの雄は雌が産卵を開始する前に雌をめぐって闘争し,ペアを形成した。ペア雄は雌の頭部に覆い被さる形で交接を始め,雄上位のままで雌雄の頭部が向き合う交接体勢を維持した。雄は自らの精莢を射出する前に,雌の口球周口腹下部で右第IV腕を動かすことによって,過去の交接によってそこに付着させられていた精子塊の一部を落下させた。その精子除去行動後,雄は交接腕である左第IV腕の根元で漏斗から吐き出した精莢をつかみ,雌の口球下部に渡した。この精莢輸送は各交接で1回だけであった。雌は平均1.5分の間隔で産卵基質に卵嚢を1つずつ産みつけ,一連の産卵行動で36から408個以上の卵嚢を産出した。また,本研究では1個体の雌が追加の交接なして200個近くの受精卵を産出することが示され,シリヤケイカの雌は過去の交接によって貯えられた精子を必要な時に受精に使う能力を持つと考えられた。それに対して雄は交接後も産卵雌を他雄からガードし続け(交接後ガード時間の範囲=41.8〜430.1分),そのガード行動中に平均70.8分の間隔で繰り返し交接を行った。シリヤケイカの雄が精子除去に費やす時間は他のコウイカ類のそれらと比べて短かったが,永続的な交接後ガード行動と繰り返し交接が短時間の精子除去から推測された本種の低い精子置換率を補償しているかもしれない。
- 日本貝類学会の論文
- 2006-09-30
著者
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竹垣 毅
長崎大学大学院生産科学研究科
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夏苅 豊
長崎大学大学院生産科学研究科
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和田 年史
Graduate School of Science and Technology, Nagasaki University
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竹垣 毅
Graduate School of Science and Technology, Nagasaki University
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森 徹
Marine World Uminonakamichi
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夏苅 豊
Graduate School of Science and Technology, Nagasaki University
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夏刈 豊
長崎大学水産学部
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和田 年史
Graduate School Of Science And Technology Nagasaki University
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