中國史研究小録 十六 「占卜」處考 : 「歴組」卜辭を中心として
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概要
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殷墟出土の卜辭には、占った地點、あるいは占った場所を記す例がある。この占卜地點の方は、遠出や遠征の際の卜辭に明記されることがあり、これらは地理的研究の方面ですでに取り上げられている。他方、占卜場所を記す例は僅少にすぎない。とりわけ、宗廟で占卜することが明記された例は、現在のところ「歴組」卜辭およびこの系統である「無名組」に限られる。この宗廟という場所での占卜の意味するところは、占う案件の問いかけ先が、宗廟の主である祖先神であると解せられる。當時、觀念された「神界」は「帝(上帝)」を頂點に戴き、祖先神などの諸神が配屬され構成されていた。そして、占うべき内容が重要案件の場合は「帝(上帝)」に問いかけるのが、通例であったに違いない。したがって、問いかけ先が異なる場合、占う案件の内容如何によっては「神界」のバランスを崩すことになる。當該の「歴組」および「無名組」卜辭は、「王卜辭」としては傍流の「村南」系統に屬すところから、主流をなす公的占卜機關「賓組」などの「村北」系統の卜辭にそうした影響を與えたらしく、主流の「帝(上帝)」信仰を相對化し、傍流から「祖先神」信仰をより強化する性格のものであり、延いては世俗的君主權力の増大に連動したらしい。
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