メディアとしてのおカネ : 試論 経済を記号論で読む
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概要
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情報化社会の進展とは、一面、情報の金銭的価値が増大し、経済全体が情報化してゆくことであろう。そんな中でおカネの重要性が増大していることは、電子マネー、携帯財布、地域通貨、マイレージなど新しいおカネないしおカネ類似物が次々に登場し、さらには、いわゆるマネー経済が世界規模で急速に拡大している現実が示す通りである。しかしながら、従来の近代経済学では、おカネは「交換の仲介物であって実物経済ではない」と位置づけられ、おカネについての考察は等閑視されてきているのが現実である。おカネは、社会的な物質循環の中枢に位置するという点で、情報をつなぐ「ことば」とともに、わたしたちの社会をつなぐ紐帯としての役割を果たしている。情報化する経済に対応するためには、おカネをその本質から捉え直すことが必要であろう。情報伝達の手段としてメディアということばが充てられるが、メディアとは、現実には、それぞれの情報を代理するさまざまな信号が乗った「乗り物」である。そして、そうした信号のなかでも圧倒的な量を占め、かつ根源的な位置にあるのは、音声信号ないしは画像信号のかたちをとった「ことば」である。本論では、それと同様に、おカネとは、物財や労働の相対的な価値を代理する「おカネ信号」が乗った、多様な「乗り物」の総称であると想定する。ここで提起したおカネ信号は、情報の分野における「ことば」に相当し、おカネはメディアに相当する。おカネ信号を想定すると、経済の領域におけるおカネの機能が、情報の領域におけることばの機能に極似していることが分かる。そのことが示すのは、情報か物財かを問わず、人々のつながりを作り出す仕組みが、基本的に、同一の原理に基づいているということである。前半でおカネやおカネ信号について考察し、後半で、そこで獲得した視点をもとに、おカネとことばの比較を試みる。
著者
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