利息を禁止した宗教の智恵 : おカネと資本についての一考察
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概要
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同源の一神教として知られるユダヤ教、キリスト教、イスラム教はそれぞれ利息を禁止してきた。イスラム教はいまも建前としては利息を禁止、ユダヤ教は「同胞」に限って禁止し、また、キリスト教は中世末期の宗教改革で解禁した。中世ヨーロッパ社会にあってキリスト教聖職者らは利息禁止を強く主張したが、その主張の背後に、ユダヤ人を差別しながらも、その一方で特権的に「異教徒(キリスト教徒)」相手の金貸し営業権を与え、そのことで彼らを操り、その収益の一部を巻き上げる、いわば体制の維持装置という側面があったとみることができる。現代金融論では、利息とは、「いまのおカネ」と「未来のおカネ」の交換、いわばおカネの"異時点間交換"にともなう差額の補填である。こうした信用システムから必然的に生じる利潤の追求こそが、現代資本主義の根幹であろう。しかし、この仕組みによって生まれたのは、「いま」に取り込まれた「未来のおカネ」を実現するため、休むことなく馬車馬のように走り続け、経済の拡大・成長を追求することを運命づけられた社会である。いつまで持続できるのか。おカネはほんらい、暮らしに役立つモノやサービスと交換したときにその価値を発揮する。その点で、モノやサービスという効用の代理物であり、効用を数値化したシンボル(象徴)といえる。効用は有限だが、シンボルは無限である。逆説的だが、古(いにしえ)の賢人や諸宗教が利息を禁止したのは、シンボルが効用を離れて暴走し、「未来」という時間を侵食することへの畏れがあったのではないか。
著者
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