「社会福祉」の神学・序説

概要

論文の詳細を見る
現代日本の社会福祉においては、「寝たきり老人」問題を初めとして、上意下達式の福祉政策、「やってあげている」式の福祉実践、「ありがたいことです」式に甘受し、沈黙する利用者など、さまざまな問題が指摘されている。このような問題の根底には、「社会福祉」ということに関する正当な理解や知識もなく、必要に迫られて、現状を打破するために、強いられてやってきたという現状があるのではなかろうか。日本社会の各部・各界・各層には、実践を重視するあまり、理論を軽視・無視し、学者・研究者を侮蔑して、実務家を偏重する嫌いがあるが、社会福祉の部門においても例外ではない。本稿においては、神学者の視座から、(1)「社会福祉の問題点」として、(1)資本主義社会と社会福祉、(2)「人間福祉」という視座、(3)社会福祉の新しい流れについて概観した後、(2)「社会福祉の神学的展開」として、(1)無神論教育と社会福祉、(2)人間を人間として捉える社会福祉、(3)社会福祉と契約の神学という点について考察し、「社会福祉」の神学に関する序説的提言を行う。