福祉と神学・宣教学との接点:キリスト教公共福祉学(1)
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概要
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キリスト教公共福祉学は総合的な学問である。従来の社会福祉学の延長上で、人間の尊厳を基礎づけるキリスト教神学、社会を理論的に分析し社会参加の方策を与える公共哲学、ソーシャル・ワークと介護実践を広くかつ深く学問化するケア学、この三つからなる総合的学問である。本論稿は、いまだ未知の分野であるこのキリスト教公共福祉学を樹立するために、その序論的考察に当てられる。まず、キリスト教公共福祉学を体系的に展開していく前提として、簡単に近代的世界観と学問論の中での、キリスト教と個別学問の結びつきの意味を明らかにしておく。次に神学の課題として福祉を考察する。ヨーロッパでは福祉の形態は国民教会のあり方と深く関係したのであるが、宣教地の自由教会として始まった日本では、福祉は一部の篤志家キリスト者を除いて教会とは接点を持っていなかった。むしろ福祉は天皇制慈恵主義としての側面が強く、それが戦後の福祉国家論の措置制度に受け継がれていく。今日、福祉の分野で契約制度に入ったときに、ようやく神学、特に宣教学と接点を持つこととなった。宣教学において文化脈絡化(contextualization)が言われて久しいが、福祉の問題を今後どのように文化脈絡化の中で捉えるか、一つの考え方を提起したい。
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