福祉のキリスト教哲学序論
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概要
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キリスト教福祉は隣人愛の教えに基づいてなされるべきものであろう。隣人愛は一般倫理学の用語では利他主義(altruism)と翻訳される。利他主義が人間にとって本来的なものか,それがどう社会生活に影響しているのか,これは社会福祉と倫理学の境界にある重要な問題である。しかし,今日,福祉の実践は隣人愛の「心」と同時に「制度」の問題ともなっている。キリスト教社会福祉論を打ちたてようとするとき,「制度」論を扱えるキリスト教社会哲学が必要となってくる。では「制度」とは何か,なぜ「制度」がそんなに大きな問題となるのか。銀行,市場,学校,病院,福祉施設,……。これらの制度なくしてわれわれの社会生活は成り立たない。そして,逆に,価値が制度を生み出す。このようにして制度と価値は社会哲学の大きなテーマとなっていく。筆者はすでに『宗教と公共哲学-生活世界のスピリチュアリテイ』第3章第5節において,福祉の概念の基本事項を扱った。本論稿はそこから発展してスピリチュアリテイと制度の問題を扱う。福祉の構造改革以降,介護保険制度の導入,支援費制度の導入,と次々と制度化が進められる。その傾向をかんがみて,福祉の問題に入る前の序論として制度論の展開が必要なのである。
- 東京基督教大学の論文
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