<諸天に関する五品>より見た『金光明経』の編纂意図
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概要
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筆者はこれまで,『金光明経』の編纂意図に関して以下の仮説を提示してきた.<提示した仮説>余所(大乗・非大乗・非仏教)ですでに説かれている世・出世間両レベルの様々な教義と儀礼を,多様な形成過程を通じて様々に集めて説き続ける『金光明経』に基づくことで,人々は功徳の獲得や儀礼の執行を含めた日々の宗教生活を「『金光明経』の教え」「〔大乗〕仏教の教え」に基づいて送ることができるようになる.したがって,『金光明経』に見られる,従来の仏典では余り一般的ではなかった諸特徴は,仏教に比べてヒンドゥーの勢力がますます大きくなるグプタ期以降のインドの社会状況の中で,仏教の価値や有用性や完備性をアピールすることで,インド宗教界に生き残ってブッダに由来する法を伝えながら自らの修行を続けていこうとした,大乗仏教徒の生き残り策の一つのあらわれと考えることができる.さらに,『金光明経』の編纂意図の一つが,できるだけ多くの教義と儀礼を集めることによる上記の「試み」にあるとするならば,多段階に渡る発展を通して『金光明経』の編纂意図は一貫していたということになる.加えて,『金光明経』は様々な教義や儀礼の雑多な寄せ集めなどではなく,『金光明経』では様々な教義や儀礼を集めること自体に意味があったということになる.本稿では『金光明経』のうち「四天王品」,「弁才天女品」,「吉祥天女品」,「堅牢地神品」に後続し,それら<諸天に関する五品>の末尾に位置する「散脂鬼神品」に焦を当てつつ,<五品>全体の特徴を明らかにすることで<仮説>の検証を行った.その結果,「『金光明経』の編纂者は<五品>を通じ,主として王族階級の人々を領民共々仏教に誘引し,伝法や修行という自らの目的を達成するため,彼らから経済的援助を得ようと試みた」という結論を得たことで,<仮説>の有効性が一層確かめられた.
- 2008-03-25
著者
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