「の」の特性と統語構造(言語学編)
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概要
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本論では、「赤いの」のような名詞句に含まれる「の」について考察した。「の」は、(i)単独で名詞として生じることができない、(ii)共起する連体修飾表現に制限があるなどの点で統語的な特徴を示すが、その一方で、金水(1995)が指摘するように、「の」の生起は、語用的な制限がかかる。本論では、Chomsky(2000)以降で展開されたphaseの概念を援用して、「の」の語用的側面を統語構造から導き出せるよう理論を整備し、あわせて(i)-(ii)の統語的特徴についても説明できる名詞句の構造を提案した。具体的には、DPをCPと同様なphaseとみなし、名詞句が意味解釈に関わるインターフェイスにより旧情報となる名詞句であると判断されると、そのDPの主要部に[G]素性を仮定し、これを下位の機能範疇(FP)の主要部に指定されたphi素性によって照合することで、音声部門においてこの[G]素性が「の」と発音されると分析した。本論の提案により、これまでの「の」の分析とは異なる視点からその統語的・意味的特徴の両面が適切に捉えられることを示した。
著者
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