サンキライホソキバガ(新称)(キバガ上科,広義のツツミノガ科) : 中国から輸入されたサンキライ(サルトリイバラ)の検疫において頻繁に発見される果実穿孔虫
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
中国から輸入されたSmilax chinaサンキライ(サルトリイバラ)の果実穿孔虫を飼育して得られたキバガ上科小蛾について,名古屋植物防疫所(名古屋港構内)より同定依頼を受けた.標本を検討したところ,その小蛾はホソキバガ属の未記載種と判断されたため,本報で幼虫および蛹の形態も含めて新種として記載した. Batrachedra smilacis sp. nov. サンキライホソキバガ(新称)(Figs 1-33) 成虫.前翅長は♀4.7mm,♂4.4mm.頭部と胸部は前翅に比べて明色に見える.前翅は淡黄褐色で,暗褐色鱗片が散布されるため灰色がかって見える;ただし前縁中央と外縁翅端付近を結ぶ線上は暗褐色鱗片を欠くため黄色い縞様をなす.♂交尾器:uncusは幅広の三角形で,長さはvalvaの長さの2/5;valva背縁はほぼ直線的で,基部から4/5腹縁近くに数本の短く太い毛が固まって生える;phallusの長さはvalvaの約2.3倍.♀交尾器:ductus seminalisはductus bursaeのほぼ中央から分岐する:ductus bursae の大型棘群に裏打ちされた領域はductus bursaeの頭側1/4を占める;corpus bursaeは洋梨型で,accessory Pouchは良く発達し先端が膨らむ. 幼虫.体長6.8-8.0mm.前脚は前面正中線寄りに細かい棘群を持つ;前胸L剌毛群は3本で,ほぼ同一水平線上に並ぶ;腹部第1,2,7,8節はSV3剌毛を欠き,腹部第1,8節はさらにSV2刺毛も欠く. 蛹.体長5.3-6.2mm.左右触角は接しない;腹部第4-7節の背面側の剌毛は他に比べて太く長い;腹部第5, 6, 7節背板前縁が前方に向かって張り出す;腹端は背面側に1対の強く硬化した黒い突起を,腹面側には先端が鈎状になった剛毛を密生する小突起を持つ. 繭:紡錘形で,前後両端から太い絹糸紐が延びる.本種の幼虫は,中国から輸入されるサンキライの検疫では頻繁に発見される.日本国内の(輸入植物の検疫所を除く)数地点において,交尾器が本種に酷似するものの明らかに大型なホソキバガ属が,雌雄数頭ずつ得られている.これら日本産の標本が本種に含まれるかどうかは,日本のものの幼生期が明らかになるまで判断を保留する.現在ホソキバガ属に含まれている種の単系統性については疑問視されているが(Kaila, 2004),本種はKaila (2004)がthe core Batrachedraと名付けた,属の模式種を含む単系統群に含まれると思われた.また,本種および東洋区でヤシの害虫とされる同属種(日本ではヤシトガリホソガの和名で呼ばれているもの)の繭・幼虫・蛹の形態を比較したところ,the core Batrachedraの単系統性を支持する共有派生形質かもしれない形質状態がいくつか見出された.
- 2006-03-20
著者
関連論文
- サンキライホソキバガ(新称)(キバガ上科,広義のツツミノガ科) : 中国から輸入されたサンキライ(サルトリイバラ)の検疫において頻繁に発見される果実穿孔虫
- Elachista freyerella種群の日本からの1新種(クサモグリガ科)
- 日本産Elachista cingillella種群 : 鱗翅目,狭義クサモグリガ科