シグナル伝達系に作用する物質がニンジンのフィトアレキシン蓄積に及ぼす効果
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概要
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ニンジンの懸濁培養細胞およびプロトプラストを用いて、エリシターシグナルの伝達系に作用する種々の化合物が、ニンジンのフィトアレキシンである6-メトキシメレイン(6-MM)の生産誘導に及ぼす効果を検討した。EGTAとA23187による処理、あるいは細胞外のCa^<2+>の除去は、酵母エリシター(YE)による6-MM生産誘導に影響しなかった。これらの結果はCa^<2+>の細胞内への流入は、6-MMの生産誘導に関与しないことを示す。ニンジン細胞あるいはプロトプラストをタンパクキナーゼの阻害剤であるstaurosporineで処理すると、6-MM合成を強く促進したが、タンパクキナーゼの活性化剤(phorbol)やホスファターゼ阻害剤(calyculinとtautomycin)はフィトアレキシン合成を阻害した。これらの結果は、エリシターを用いたニンジン細胞のフィトアレキシン生産に、タンパク質のリン酸化のパターンが大きく関与していることを示す。細胞をneomycinで処理すると6-MM合成が抑制されることは、ホスファチジルイノシトールポリリン酸の代謝が必須であることを示している。また、lipoxygenaseやphospholipase A_2の阻害剤が、YEエリシターによる6-MM合成を抑制したこと、およびlipoxygenase阻害剤はstaurosporineその他の薬剤による6-MM生産促進効果も完全に阻害したことは、フィトアレキシン生産に脂質過酸化が決定的な役割を持っていることを示す。
- 近畿大学の論文
著者
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太田 喜元
近畿大学生物理工学部生物工学科
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太田 喜元
Department Of Biotechnological Science Kinki University
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郭 沢建
サミュエルロバーツノーブル財団植物生物学部門
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