企業の手元流動性にかかわるガバナンスと企業買収および買収防衛の考察
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概要
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本論文は企業の手元流動性をめぐるエージェンシー問題について考察する。過剰な流動性を持つ経営者は,再投資に必要な額を上回る投資をすることで私的便益を享受したい一方で,流動資産を多くその支配下に保有し隠匿したい,といった相反するエージェンシー問題を孕む。ここでは投資家が最適な報酬とガバナンス強度を設定することでこれらの問題をコントロールできることを示した。また,企業の留保現金をターゲットとした買収が企図される場合,買収が投資家による企業統治に与える影響を考察する。買収の可能性がある場合,投資家はガバナンス強度を下げる。さらに,買収防衛が社会的厚生を下げるとしても,投資家は防衛策を導入するインセンティブがあり,それは再投資に必要な額が小さいほど大きくなる。