武蔵野台地西端部の地形と自由地下水
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概要
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武蔵野台地西端部の地形は上位から三ツ原面・藤橋面・原今井面・新町面・青梅面・竹ノ屋面・天ケ瀬面・千ケ瀬面・林泉寺面・郷土博物館面に区分され,また霞川低地に沿っては沖積低地が分布している。三ツ原面・藤橋面・原今井面は南関東の下末吉面・小原台面・三崎面にそれぞれ対比され,新町面は立川面に,青梅面は青柳面に,竹ノ屋面は拝島面にそれぞれ相当する。青梅面より上位の段丘は層厚20m以上の厚い段丘礫層からなり,関東ローム層におおわれている。竹ノ屋面より下位の段丘は多摩川に沿って分布し,規模は小さく,また段丘礫層も薄い。調査地域の地下水は霞川低地を涵養源とし,そこから南東方向へ流下し,大塚山から三ツ原へのびる地形の分水嶺を越えて流れている。地表から地下水面までの深度は三ツ原地区や青梅線に沿う地区で深く,霞川低地帯や千ケ瀬面で浅くなっている。地下水面の季節的変化についてみると,台地上では4月の測水時に最も深く,10月に浅くなっている。このような変化は降水量の年変化とほぼ一致している。霞川低地帯や千ケ瀬面では,滞水層の透水性がいいために地下水位の季節的変化は小さく,むしろ降水に伴う短期間の変動が大きい。地下水温にほぼ一致すると考えられる井水温は,関東ローム層におおわれた洪積台地と霞川低地・千ケ瀬面とでは異なっている。洪積台地での井水温は15℃前後となっており,年間を通じて変化が小さく,特に新町面・青梅面での年変化は約1℃以下である。これに比べて千ケ瀬面では12℃から18℃まで,霞川低地帯では10℃から19℃近くまで変化し,季節的変化が大きい。井水面水温と井底面水温とでは,一般に井水面水温の方が高いが,場所によっては4月に井底面水温がわずかに高くなっているところもある。これは気温の影響によるもので,関東地方ではおよそ14〜15℃とされている地中温度よりも気温が低くなり,そのために大気と接する井水面水温が下るためである。井水面水温に比べて井底面水温は気温の影響を受けにくいため季節的変化が小さいが,井戸の総深や湛水深との関係はほとんどないようである。調査地域西端付近の勝沼3丁目・南部氏宅で,1976年3月18日から1977年1月24日までの313日間にわたり,水位・井水面および井底面の水温の測水を行なった。その結果によると,水位の変化は主として数日間における降水量に大きく支配され,1回の降水量が20mm以下の場合には相関関係は認められないが,降水量が20mm以上になると,およそ降水量10mmに対して20cmの割合で水位は上昇している。井水温は井水面で15.5〜16.8℃,井底面で15.5〜16.0℃を示し,調査期間中に大きな変化は認められなかった。この報文を作成するにあたり,調査の機会を与えられた青梅市自然環境調査団(団長・米光秀雄氏),観測器具の使用を快く許可され,また御指導していただいた駒沢大学地理学教室・長沼信夫教授,気象観測資料を提供された東京都水道局水源林事務所,そして約300日間にわたる測水を快く許可された南部昇氏,以上の方々に末筆ながら厚くお礼申し上げます。なお,南部氏宅における日々の測水は,主として妻・達子が行なった。この報文を,故多田文男先生の御霊前に捧げます。
著者
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