ヒト消化管由来細胞におけるポリオワクチンウイルスの毒力復帰変異の解析
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概要
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背景 経口生ポリオワクチンとして使用されている弱毒ポリオワクチンウイルスは、ヒトの消化管において毒力復帰変異を起こし易いことが知られており、そのウイルスが原因と考えられるポリオ(急性灰白髄炎)の発症例も報告されている。更に、その変異ウイルスは、糞便とともに環境中に排泄されることで、世界中でポリオの新たな流行を引き起こしており、ポリオ根絶計画達成の妨げとなっている。目的 本稿では、ヒト消化管におけるポリオワクチンウイルスの毒力復帰変異機構を明らかにすることを目的として、ワクチンウイルスをヒトの消化管由来培養細胞を用いて継代培養し、継代によってどの程度変異ウイルスが出現(蓄積)するか解析を行った。方法 ヒトの大腸ガン由来細胞を用いて37℃あるいは34℃でポリオワクチンウイルスを3代継代培養し、その培養ウイルス池中の毒力復帰変異ウイルスの混入割合(変異ウイルスの蓄積)について、遺伝子レベルでウイルスの神経毒力の強さを測定することができるMAPRECと呼ばれる方法で解析した。結果 継代による毒力復帰変異ウイルスの蓄積は、37℃で培養した方が34℃で培養したときと比べて明らかに高かった。しかしこの変異ウイルスの蓄積は、ヒトの喉頭ガン由来細胞であるHEp-2細胞においてはほとんど観察されなかった。結論 本研究より、細胞の種類や培養温度により毒力復帰変異ウイルスの出現頻度(蓄積の程度)に大きな違いが見られた。今後は、どのような細胞側因子がこの違いに関与しているかを解明することが重要である。そしてそのような研究は、ワクチンウイルスの毒力復帰変異機構の解明と、その抑制手段の開発に結びつくことが期待される。
- 滋賀県立大学の論文
著者
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山田 明
奥羽大学 薬学部微生物学分野
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堀江 均
奥羽大学薬学部微生物学分野
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山田 明
滋賀県立大学人間看護学部
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Horie Hitoshi
Department Of Microbiology Ohu University School Of Pharmaceutical Sciences
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