香港の冬季におけるヒトメタニューモウイルス(hMPV)の流行
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
背景 human metapneumovirus(hMPV)は、2001年にvan den Hoogenらによってオランダで発見された新たなパラミクソウイルス科のウイルスである。性状は、Respiratory syntytial virus(RSV)に似て、冬季の呼吸器感染をおこすとされている。その後、hMPVは、世界の各地で検出、分離されているが、詳細はまだ完全には明らかになっていない。目的 RT-PCR法によりhMPVの遺伝子を検出することにより冬季におけるhMPVの流行状況を調べることを目的として以下の研究を行った。また、同時にRT-PCRによって同時期のRSVも調べ、hMPVの流行との比較検討をおこなった。材料及び方法 2000年、2001年の冬季(1月〜4月)の間に香港新界地区にあるプリンス・オブ・ウェールズ病院を呼吸器症状で受診した患者より採取された鼻咽頭吸引液(NPA)1209検体を用いた。検体よりウイルスRNAを抽出の後にnucleocapsid(N)geneのcDNAの合成とそれに続いてnested PCRによるDNAの増幅を行った。その産物をアガロースで電気泳動の後にEtBrで染色、紫外線照射して増幅DNAの確認をおこなった。結果 20歳以下については、検体が少ないため判断が困難であるが、10歳以下では、hMPVは各年齢にばらっきは少なく6〜8%の割合で検出された。一方、RSVは年齢と共に減少していく傾向がみられた。1209検体のうち77検体(6.3%)にhMPVの遺伝子が検出された。2000年、2001年いずれの年もhMPVは、調査した冬季のうち3月に一番多く検出された。また、年齢別では0歳から10歳までの検体に検出され、それより高い年齢では検体数が少ないこともありほとんど検出されなかった。一方、RSVでは、135検体(11.2%)に遺伝子が検出されたが、3月、10歳以下に多いというhMPVと類似の結果を得た。結論 冬季の呼吸器患者のNPAのウイルス遺伝子の検索によりhMPVは、RSVと似た季節の流行パターンを示すことが示唆された。また、各年齢から検出されていることより、小児期におけるhMPVの再感染の可能性が考えられた。
- 滋賀県立大学の論文
- 2005-03-31
著者
-
山田 明
奥羽大学 薬学部微生物学分野
-
山田 明
滋賀県立大学人間看護学部
-
Lam Lap-Yee
Prince of Wales Hospital, Chinese University of Hong Kong
-
Tam John
Prince of Wales Hospital, Chinese University of Hong Kong
-
Lam Lap-yee
Prince Of Wales Hospital Chinese University Of Hong Kong
-
Tam John
Prince Of Wales Hospital Chinese University Of Hong Kong
関連論文
- ヒト消化管由来細胞におけるポリオワクチンウイルスの毒力復帰変異の解析
- 香港・淘大花園におけるSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行(活動と資料)
- 香港の冬季におけるヒトメタニューモウイルス(hMPV)の流行
- 香港の冬季におけるヒトメタニューモウイルス(hMPV)の流行
- メタニューモウイルス感染症 (特集/かぜ症候群) -- (1.冬のかぜ)
- 混合プライマーを用いたRT-PCR法による呼吸器ウイルス遺伝子の検出