エコシステム構想における看護支援ツールとその事例考察
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概要
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背景 ソーシャルワークの領域において、エコシステム構想という用語が現れ始めたのは1980年代頃であり、エコシステム構態とは、システム論と生態学的視座から構築された中範囲概念である。この中範囲概念と実践活動の統合化を目指す一つの試みとして、ソーシャルワーク領域の研究者により支援ツールの開発が進められている。看護領域において看護者は、利用者を中心に環境や生態学というグローバルな視野を含めて、その人の健康問題解決への支援や家族支援など日々実践活動を行っている。しかし、エコシステム構想による概念やその支援ツールは看護領域において散見できない。そこでエコシステム構想を含む看護概念枠組みの構築とその具現化としての看護支援ツールを作成し、ツールを用いた事例考察を行う。目的 (1)エコシステム構想を含む看護概念枠組みを構築する。(2)看護領域を対象とした看護支援ツールを作成する。(3)作成したツールを用いて事例考察を行う。方法 文献渉猟などによるエコシステム構想から示唆を得て、看護における概念枠組みの構築を行う。その概念から構成される階層を区分し、先行研究を元に看護支援ツールを作成する。看護支援ツールには、事例から得られた128項目の回答を第1次、第2次データとして入力し、シミュレーションの比較を行う。結果 看護の概念枠組みの構築と看護支援ツールの作成を行った。その支援ツールを用いた事例では、(1)退院時の第1次データ入力で、利用者に対する社会的支援や、疾病に関する項目で低い値を示した。(2)それをもとにチームとして支援した結果、6ヶ月後の第2次データ入力では、利用者の生活状況の改善やその変容がビジュアルに現れた。結論 (1)今回の事例では、看護支援ツールの活用により利用者の生活課題が明確になった。(2)支援者は、専門職チームとして看護支援ツールを用いることで、利用者の現状をより理解でき、支援に向けてチーム機能を果たした。これが各専門職と共通領域で統合化できる人間や環境のとらえ方であり、根底にあるエコシステム構想の概念的思考が重要といえる。本研究では、エコシステム構想の中範囲概念を看護領域の実践活動へ統合化する方法として、看護支援ツールを用いた。今回の事例は、看護支援ツールの有効性が確認できた一つの結果であるが、今後は多様な事例を対象とした検証をかさね、看護支援ツールの活用手法及び有効性の検証が必要である。
- 滋賀県立大学の論文
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