スピンアダクトのMS/MS分析とその壊裂パターン(松川貞央教授退職記念号)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
フリーラジカルは不対電子を有する化学種であり、種々の化学反応において、反応中間体として生成することが予想されている。しかし、一般にフリーラジカルの寿命は短く、その検出や構造決定が困難である場合が多い。フリーラジカルを検出する手段には種々あるが、不対電子を直接検出対象とする電子スピン共鳴(ESR)法が最も直接的な検出方法であると考えられる。電子スピン共鳴法に於て、短寿命のフリーラジカルの検出にスピントラッピング法が最もよく用いられる。この方法はスピントラップ剤[N-tert-Butyl-α-phenylnitrone (PBN)、α-(4-Pyridyl 1-oxide)-N-tert-butylnitrone(4-POBN)、5,5-Dimethyl-1-pyrroline N-oxide(DMPO)、2-Methyl-2-nitrosopropane (NMP)など]を反応系に添加し、フリーラジカルと反応させ、比較的安定なラジカルアダクトを形成させるものである。このラジカルアダクトの電子スピン共鳴スペクトルを測定することにより、反応前のフリーラジカルについての情報を得る。筆者らは、HPLC/ESR法(電子スピン共鳴装置を検出器とする液体クロマトグラフィー)とLC/MS(液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー)法を併用することにより、ラジカルアダクトのマススペクトルを測定し、フリーラジカルの構造決定を行ってきた。LC/MS測定においては、イオン化法として、サーモスプレーイオン化法、エレクトロスプレーイオン化法を用い、ラジカルアダクトの擬分子イオン(M+1)^+の測定に成功してきた。サーモスプレーイオン化法、エレクトロスプレーイオン化法では擬分子イオン(M+1)^+のピークがおもに得られ、その壊裂から生じる娘イオンについてのピークはほとんど得られなかった。娘イオンにはラジカルアダクトの化学構造についての情報を多く含み、構造決定のためには必須な情報である。そこで筆者は種々の4-POBNラジカルアダクトについて、その娘イオンの情報を得るために、Continuous Flow Fast Atom Bombartment (CF-FAB)法でMS/MS測定をおこない、その壊裂パターンの解析より、4-POBNラジカルアダクトに共通する壊裂パターンを見いだすことを試みた。
- 和歌山県立医科大学の論文
著者
-
岩橋 秀夫
和歌山県立医科大学大学院医学研究科生体分子解析学
-
岩橋 秀夫
和山県立医科大学化学
-
岩橋 秀夫
和歌山県医大 医 教養医学
-
岩橋 秀夫
和歌山県立医科大学医学部教養医学大講座
-
岩橋 秀夫
和歌山県立医科大学・化学
関連論文
- リボフラビン溶液中への UVA 照射によるスーパーオキシド生成に対する各種精油(エッセンシャルオイル)の効果
- PL1-6 肝虚血再灌流時に発生する肝組織内フリーラジカルに対するNO阻害剤の抑制効果
- 131 急性閉塞性化膿性胆管炎におけるヒドロキシラジカルの発生とその治療法
- 急性閉塞性化膿性胆管炎におけるヒドロキシラジカル発生
- 柿による悪酔い防止の生理学的研究
- 銅結合プリオンタンパク質によるニトロソチオール分解の促進
- W6-2 肝温阻血操作後の再灌流障害に及ぼす肝組織内ヒドロキシルラジカルの影響
- 346 Bacillus sp.によるフェルラ酸の4-ヒドロキシ-3-メトキシスチレンへの変換(生物化学工学,一般講演)
- 米ぬか中に多量に含まれるフェルラ酸のヘム蛋白質が触媒する過酸化脂質由来ラジカル生成への影響 (学術研究助成による成果) -- (一般公募による学術研究助成)
- 米ぬか中に多量に含まれるフェルラ酸の過酸化脂質由来ラジカル生成への影響
- フリーラジカル生成と生体内反応
- フリーラジカル生成と生体内反応
- HPLC/ECD/UVによる3-ヒドロキシキヌレニンの酸化産物の検出
- スピンアダクトのMS/MS分析とその壊裂パターン(松川貞央教授退職記念号)
- 銅結合プリオンタンパク質によるニトロソチオール分解の促進