全国消費実態調査リサンプリング・データによる消費者の交通選択要因についての多重クロス分析
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概要
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本稿は,自動車保有の有無および居住地域属性が,消費者の交通サービスの選択に与える影響について,総務省「全国消費実態調査」のリサンプリング・データを用いて明らかにすることを試みたものである。分析にあたり,全国消費実態調査リサンプリング・データの目的外使用の許可を受け,集計表の組み換えを行なった。組み換えにより,全国消費実態調査の交通関連消費の品目分類について,自動車保有の有無別,6地域別,3都市階級別に集計した多重クロス表をわが国で初めて作成した。作成した多重クロス表による分析の結果,鉄道運賃は「関東」や「近畿」で高い支出となっており,バス代は鉄道運賃の支出の低い「北海道・東北」,「北陸・東海」,「九州・沖縄」で高い支出となっていた。タクシー代は交通網の比較的希薄な「北海道・東北」,「中国・四国」,「九州・沖縄」で高く,航空運賃は「北海道・東北」,「九州・沖縄」で高い支出となっていた。これらを自動車保有の有無別でみると,鉄道運賃,バス代,タクシー代,航空運賃のいずれについても,自動車保有世帯より非保有世帯のほうが高い支出となっていることが明らかとなった。また,「関東」の自動車非保有世帯の鉄道利用,「北陸・東海」の自動車非保有世帯のバス利用,「北海道・東北」の自動車非保有世帯のタクシー利用が高いなど,それぞれの交通機関における地域特性も示された。さらに,「北海道・東北」の町村では,自動車非保有世帯のタクシー代は保有世帯の10倍以上の支出となっており,交通網が希薄な地域において自動車を保有していない交通弱者世帯の,移動をタクシーに依存せざるを得ない現状が明らかとなった。また,航空運賃についても同様に,「九州・沖縄」の町村における自動車非保有世帯で高い支出となっていることが示された。