ヒスタミンN-メチル基転移酵素の発現とシグナル伝達,分化およびアポトーシス誘導への作用
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概要
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生理活性物質であるヒスタミンを分解する酵素であるヒスタミンN-メチル基転移酵素(HMT)は,哺乳動物においては動物種や臓器によってその活性は異なっていることが知られているが,培養細胞における発現に関しては未知であった.そこで,20種類の培養細胞におけるHMTの発現を調べたところ,HeLaとMeWo細胞におけるHMTの発現が多く,AZ521, HCT15, 293T,P815とPC-12細胞におけるHMTの発現は検出されなかった.HMTの抗体を作成してマウスおよびラットの臓器でのHMTのタンパク質の発現を調べたところ,ラットでは腎臓で発現が多く,次いで空腸で発現が確認され,脳や肝臓では発現が弱かった.一方,マウスでは脳および肝臓での発現が多いが,腎臓および空腸での発現は弱かった.HeLaおよび293T細胞において,完全長のHMTは細胞全体に局在したが,C末端を欠失したHMTの変異体は細胞質のみに局在した。またN末端から中央部分までを欠失した変異体はゴルジ体・エンドソーム系に局在した.未分化のPC-12細胞はヒスタミン処理によりp44/42 MAPキナーゼのリン酸化が増加した.このヒスタミンによるp44/42のリン酸化増加はHMTの強制発現により抑制された.一方,NGFによって分化誘導した細胞ではHMTの発現により,p44/42のリン酸化が増加した.HMT発現細胞をNGFで分化誘導し,さらにヒスタミンで処理するとp44/42のリン酸化は,1時間後にいったん対照の非発現細胞と同程度にまで減少した後,6, 24時間後にはヒスタミン添加前と同程度にまで増加した.一方,PC-12細胞にHMTを発現させても,細胞に形態変化はおこらず,またNGFによる分化誘導にも影響しなかったが,NGFで分化したHMTを発現するPC-12細胞では,ヒスタミン処理によってHMTの局在が突起部分に移行するのが観察された.またドーパミンによって誘導されるPC-12細胞のアポトーシスにはHMT発現による影響はみられなかった.
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