外国籍住民集住地域における地域福祉活動の実態と課題 : 岐阜県可児市の住民組織の取り組みから
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概要
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現在日本で働く日系ブラジル人の多くは社会的な課題となっている不安定就労層に属しており、わが国の社会保障ならびに社会福祉サービスの狭間で最も深刻な生活不安にさらされている存在である。就労目的で来日した日系ブラジル人は特定地域に集住する傾向がある。彼らの就労は経済の動向に左右され、また少しでもよい条件の雇用を求める人たちは日本国内の移動を繰り返すこととなり、その滞在は長期化傾向にある。個々の日系ブラジル人が移動を繰り返しそこに住む人物が入れ替わり立ち代りであったとしても、集住地域と呼ばれる都市などを中心として、ホスト住民にとっては「日系ブラジル人たち」という存在がはっきりと見える存在となりつつある。日系ブラジル人を取り巻く生活課題を把握するための調査の過程で、地域社会のなかで起きている課題に対して、きっかけは不満や苦情であっても現状を打開するために行動に移し、次第に「同じ地域に暮らしていくもの同士」という認識を深めていく人たちの実態が明らかになった。興味深い点は、それらの活動が地縁組織とアソシエーション型組織の協働あるいは融合の可能性を持っていることである。本稿では、日系ブラジル人の集住都市である岐阜県可児市における住民組織の活動事例を手がかりとして、課題克服に向けて動く住民組織の変化とそれらの組織が果たした役割について整理し、成り立ちや動機の異なる組織のネットワークの可能性について考察する。