胡適の文学史観について : 「中国文学史」の成立に関する一考察
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概要
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現在の「中国文学史」は,基本的な部分では胡適が作り上げたモデルに多くを負っている。それ以前の「中国文学史」と銘打つ著作が歴代の文章を羅列する資料集に過ぎなかったのに対し,胡適は近代西洋的文学観と発展的歴史観を導入し,「国民の文学史」としての「中国文学史」像を初めて明確に提示した。胡適の文学史観は,近代的な「中国文学史」を成立させたのである。しかし同時にそれは「系統」への過度の志向や「規範」を強く求める意識をもはらんでおり,以降今日に至る「中国文学史」の性格に関わる問題の源ともなった。「中国文学史」自体を見直すには,「文学史」を社会的意義の強いものに変えた胡適の文学史観の再検討が重要であろう。
- 2008-09-25