非同質的なクールノー企業の経済行動と他財の価格変化の関係について (柴田洋雄教授退職記念特集)
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概要
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はじめに:本稿では,非同質的なクールノー企業によって構成される財市場が他財の価格変化によってどのような経済効果を受けるかについて分析を行う。是川(2008)では,Seade(1985)やMyles(1987, 1995)の手法にしたがいつつも,一般的な逆需要関数や費用関数を仮定したうえで,不完全競争市場における当該財以外の財の価格変化が均衡価格および各企業の均衡生産量や利潤に与える効果について考察した。考察の結果,不完全競争市場における特徴的な現象として,代替財(補完財)の価格上昇が当該財の価格を下落(上昇)させること,当該財生産企業の生産量を減少(増加)させること,当該財生産企業の利潤を減少(増加)させることの3つの可能性が存在することが示された。あわせて,それらの特徴的な現象が生じるために要請される経済的諸条件も提示された。これらの諸条件においては,不完全競争企業によって生産される財の逆需要関数の凸性の程度が重要な意味をもっていることが明らかにされた。是川(2008)の分析では,各企業が同質的であること,すなわち各企業の費用関数が等しいことを仮定している。そこで,本稿では各企業間における限界費用水準の相違を考慮したクールノーモデルを用いて,他財の価格変化が当該財生産企業の均衡生産量や利潤に及ぼす効果について検討を行う。これらの効果の符号の決定においては,非同質的な不完全競争企業に対する物品税課税の経済効果について考察した是川(2007a, b)での分析結果と同様,各企業の市場占有率や逆需要関数の性質との関係が重要な役割を果たすことが提示される。本稿の構成は以下のとおりである。第1節においてモデルを提示する。第2節では,他財の価格変化が不完全競争企業の均衡生産量に及ぼす効果を分析し,第3節では,他財の価格変化が不完全競争企業の利潤に及ぼす効果について分析する。これら2つの節では,不完全競争企業における特徴的な現象が生じる諸条件について,企業の市場占有率や逆需要関数の傾きの弾力性との関係に注目して分析が展開される。第4節では,価格の変化や均衡生産量の変化が利潤に及ぼす効果を陽表的に考慮しながら,第2節と第3節で提示された結論について経済学的な考察を加える。第5節で,まとめを行う。
- 2008-07-31
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