医療倫理学教育におけるケース構成法の意義
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概要
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現場で日常的にさまざまな倫理問題に直面することになる医療者を養成する教育機関では、医療倫理学の授業の中に原理的な諸問題や、先端技術の応用をめぐる各論的諸問題の考察にとどまらず、ケーススタディを組み込む必要がある。より具体的、実践的なケーススタディには、教員が説く一方向的な講義スタイルでは得られない大きな教育効果があることはいうまでもない。けれども、こうしたケーススタディに方法論上の制約がつきまとうこともまた事実である。ケーススタディというものは所詮つくりものであり、ケースに出てくる人物たちの本当の心は描かれることなく、描かれる人物自身が交換可能な抽象的で非現実的な存在だという批判がある。また従来型のケーススタディでは、学生の図式的解析力ばかりが刺激され、想像力はなおざりにされ、結果として、ケースそのものがふくみもつ問題性が結局のところ抽象的な問題に還元され矮小化されがちである。こうした従来型のケーススタディがもつさまざまな方法論上の欠点を回避し、しかも同時にその効果をより大きなものにするために、筆者はケーススタディの仕組みそのものを逆転させて、学生の小グループ毎に仮想ケースを作り上げるという実習を課し、これを「ケース構成法」と名づけている。本稿ではその狙いと、2学年度にわたって実際に行った方法と、学生の反応を示す。ケース構成法は効果も大きいが負荷も大きい。それゆえさしあたり医療系学生に限って行われるべきケーススタディの一方法だと考えられる。そのばあいでも練り上げられた完成度の高いケースを用いたケーススタディで従来型の予備的ドリルを十分に積んだ後に、続けてケース構成法を行うのが望ましい。
- 2007-09-20
著者
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