健康を増進する義務
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
自分の健康を保持増進することを義務とする言説を批判的に吟味することが本稿の課題である。ただし、世界の諸国の保健の実情には大きな差があり、紙幅の制限上、考察をこの国をふくめた先進国に限ることにする。古典的公衆衛生から新公衆衛生運動への転回をながめたのち、健康増進をめぐる現今の言説の特徴を浮き彫りにする。それは、ヘルシズム、医学の擬似宗教化ならびに道徳化、疾病への過剰な意味の付与、日常生活の医療化、疾病の自己責任の強調、医療費削減のためのレトリックである。それぞれについての問題点をあげて検討しながら、健康を増進する義務というものがもしあるとするならば、それは国家の側にあること、ただしそれは国民に恣意的で一面的な健康像をパターナリズム的に押し付けることではなく、環境や社会資源、医療体制の整備に重点を置くものであるべきこと、つまり古典的公衆衛生が中心であるべきことを論じる。
- 2006-09-25
著者
関連論文
- 医療倫理学ケースの物語論
- 患者による治療拒否 (特集 看護倫理こんなときどうする?) -- (こんなときどうする倫理の問題)
- 医療倫理学教育におけるケース構成法の意義
- 健康を増進する義務
- 結合双生児の分離手術をめぐる哲学的考察(第50回北関東医学会総会抄録)
- 臨床倫理学と文学
- 多様な健康像の定式化の果てに(健康概念の再検討-幸福と病気の間-)
- 臨床倫理学と文学
- 臨床倫理学におけるカズイストリの可能性