栄養学研究と医療技術(<特集>医療技術と医療福祉学)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
人のからだは栄養素の代謝によって営まれており,傷害を受けたり臓器組織の生理的・機械的な機能低下や代謝に異常が生じると,からだの一部あるいは全身の営みに支障をきたす.そうした傷病を排除あるいは軽減,抑制するために必要な医療が施される.しかし栄養素の摂取が完全に不可能となれば死に至り,医療行為は不要となる.ひとりの人間が生涯にわたって無傷,無病を完遂する可能性は極めて低く,傷病に対して的確かつ高度な医療が常に要求される.人の体が栄養素の代謝によって営まれる以上,栄養素の摂取が完全でなければならない.しかし咀嚼・嚥下に障害があれば,咽頭以降の消化管にバイパスチューブで栄養素を含む食品あるいは栄養剤を投与しなければならない.そこに栄養素の選択,量の決定という基本的な栄養学の研究が必要となり,チューブを用いた投与行為そのものが医療行為であるためチューブの素材,形状および挿入法の開発・研究が医療技術発達に関する研究が必要である.さらには胃腸機能障害があり,まったく消化管からの栄養素摂取が不可能な場合には血流に栄養素を直接流入させなければならず,消化管投与以上に厳しい栄養素の選択および量の決定に関する栄養学的研究が必要となる.そして非生理的投与かつ血液への投与のため,チューブ挿入に関する医療技術および衛生管理に関する研究が必要となる.人の体が約60種の元素でできている以上,消化管あるいは静脈に投与される栄養素は,その60種すべての投与が望まれるが,現行の栄養剤では1日摂取量の多い炭水化物,脂肪,たんぱく質,ビタミンおよび一部のミネラルだけであり,生理反応が未解明な元素は量が定まらず栄養剤に加えられることはない.しかも,自然な形で食する食材には色素などのように人の体では造られないが生理作用のある物質の投与も必要量が定まらず,投与できない.つまりこうした極微量な元素や色素等の化学物質の生理作用に関する栄養学研究がまだ不十分といえる.医療において栄養学研究に対する特段の評価が得られたのは外科領域で,術前・術後の栄養管理が治療成績に与える影響が大きいことで判明した.しかし多くの疾患に対し,治療薬剤の効果を十分に発揮させるには個々の疾患に関して更なる栄養学の研究が必要である.しかもかつてに比べ日本人が罹患する疾病構造に違いが出てきており単に糖尿病,腎臓病等の疾患に限らず重複する疾患に関する栄養学の研究が要求される.また,これからの新薬を含めた治療薬剤との相互作用に関する栄養学的研究が必要であり治療成績の良否に強く関わると考えられる.栄養学の研究が発展してきた結果,栄養素の長期投与による延命が可能になった.しかし,少子高齢社会となった今,高度医療下における寿命の延びは医療費の増大に繋がっていることは否めない.そのため,命の在り方,医療行為の在り方に関する法的な整備が栄養学研究と医療技術の発展に不可分となってきている.
著者
関連論文
- 栄養学研究と医療技術(医療技術と医療福祉学)
- 高校野球部員における栄養素摂取に関する考察
- 8週間の低強度有酸素運動が運動習慣のない若年女性の体組成と基礎代謝量に与える影響
- 身体活動に差がある女子大学生間の体組成および安静代謝量
- 健康スポーツ教室に参加した中高年者の基礎代謝量
- 若年女性のレジスタンストレーニングが体組成と安静時代謝量におよぼす影響
- トレーニング習慣のある男女の体組成と安静時代謝量
- 若年女性におけるウエイトトレーニング効果
- ヒトにおけるイノシシ肉の効果
- サッカー練習時における発汗量と飲水量の実態
- 大学スポーツ選手の栄養調査 : (1)サッカー
- 重症心身障害児(者)の栄養状態