生業環境の変化への二重の対応 : 中国・ポーヤン湖における鵜飼い漁師たちの事例から
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概要
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本研究は、中国・ポーヤン湖の鵜飼い漁を対象に、生業環境の変化への漁師たちの対応の来歴を明らかにし、彼らの一連の対応のなかの連続性について考察するものである。本研究では、時間軸を新中国成立以前から現在までに設定し、国家政策の実施や干拓等による漁場の減少といったマクロレベルの変動を視野に入れつつ、そこで生きる鵜飼い漁師たちの対応を捉えようとした。本研究の一連の事例からは、漁師たちが漁撈技術と漁の決まりを変化させ、あるいは折衷させながら漁を続けてきたことが示された。具体的には、漁師たちは旧来の技術を補うかたちで最新の技術を導入するというような技術の発展的な変化とは異なり、これまでの技術をそのまま再編することで漁のやり方を帰る、いわば技術の展開ともいえる方法を実践してきたことが示された。また鵜飼い漁は、比較的特殊な漁撈形態ゆえに技術革新によって漁のやり方を変えていくことが難しい。このような技術的性質をもつ鵜飼い漁が生業環境の変化に対応するには、技術以外の部分での対応も重要となる。こうしたなか漁師たちは、漁村間や漁師同士で漁の決まりを定め、それをたえず調整することで漁の秩序を維持してきたことも示された。本研究では、こうした鵜飼い漁師たちの事例が、機械化や装置化、専門化といった生業技術の発展的な変化とそれへの対応を漁師たちの生業戦略の表れとみてきた先行研究の事例と異なることを指摘し、漁師たちにそのような対応を選択させる要因について考察を加えた。
- 日本文化人類学会の論文
- 2008-06-30
著者
関連論文
- 飯田卓著, 『海を生きる技術と知識の民族誌-マダガスカル漁撈社会の生態人類学』, 京都, 世界思想社, 2008年, 348頁, 4,600円(+税)
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