フィリピンにおける採取林業から育成林業への転換過程
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概要
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フィリピンのフタバガキ天然林における商業伐採活動は90年代にほぼ終焉したが,伐採コンセッションに隣接する村落に残留した伐採労働者の中には,その後も天然生二次林からの盗伐に依存して生計を立てている者が多い。調査地であるイサベラ州の伐採コンセッション跡地においても,奥山での採取林業は引き続き大きな生業であるが,1996年以降,自営農地内での造林活動が急激に活発化しており,採取林業から育成林業への転換過程を実地のフィールド・ワークによって確認できた。この現象の背景には,伐採場所が奥地化する中で天然材の搬出コストが上昇し,早生樹種であるヤマネの生産が十分な超過利潤を取得することが可能になったことがある。この事例のような育成林業の開始過程は,半田良一が展開した二範疇林業の理論に整合的な現象であると思われる。今後,さらなる搬出コストの増大に伴って天然生のフタバガキ材は市場から退出し,盗伐者たちは小規模育成林家へと生業転換していくものと予想される。そうなれば奥山に最後に残されたフタバガキ天然生林を保全するための経済的条件が整うことになる。
- 林業経済学会の論文
- 2000-03-10
著者
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