多動児の行動変容に関する研究(2)
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概要
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本研究は、精神遅滞を伴う多動児に対するオペラント条件づけ法適用後の経過について検討したものである。フォローアップは4期に分けたが、本研究では主として第3期と第4期の経過について考察した。フォローアップ研究は、(1)条件づけ期間と同一条件のもとで20分間を1セッションとして第1期は30セッション、約1ヵ月半、第2期は35セッション、約3ヵ月間、第3期は15セッション、約1ヵ月間、第4期は15セッション、約1ヵ月間それぞれ観察した。第1、2期は遊戯室での自由遊び時、第3、4期は着席時と自由遊び時の各々の活動量と行動特徴の変容過程をとらえ分析した。行動分析は条件づけ時と同様にPEDO METERによる活動量の測定結果と観察された行動特徴の記録の両側面からなされた。(2)多動行動とそれに伴う行動特徴の分析の外に、多次元にわたる心理学的諸特徴、すなわち、対人関係、対物関係、知的能力、運動能力、基本的生活習慣、言語とコミュニケーション、感情・情緒について分析した。(3)対象児の多動行動をより正確に把握し、さらに治療効果の検討を厳密にするために条件づけ期間中に比較の対象とした健常児を再度用い、同一条件のもとで比較を行った。以上の方法によるフォローアップ研究から、およそ次のことが明らかとなった。1.本事例では、オペラント条件づけ法の適用により、多動行動の減少と行動特徴に好転的変容をもたらした。それは、以後1年9ヵ月間持続した。2.多動児の示す行動は、多動という運動の量的側面のみならず、行動異常の質的側面も含んでいるが、この質的側面の行動特徴は、多動行動の減少とともにほとんど減少するか消失した。しかし、「クレヨン、遊具、画用紙をなめたりかんだりする」口の動作は持続しているが、これは多動行動とは関係がなく、むしろ精神遅滞と関連のある動作とも考えられる。3.多動行動の減少と、それに伴う注意行動の改善によって、対人関係、対物関係、知的能力、運動能力、言語とコミュニケーションの広範囲における好転的な変容が観察された。4.多動行動の減少と注意行動の持続により、他の行動面での変化が観察されたが、それはフォローアップ期間中の一貫した家族の協力も見逃がせない。すなわち、家庭で条件づけ時と同じように着席による描画、文字や数字の学習などを日課としたこと、また、それに対する社会的強化を与えたことなどである。治療の効果は、フォローアップ期間中の家庭での指導を系統立てたものにしておくことによって高められると考えられる。また、多動児の治療と教育は、対症療法的なものではなく全人格的アプローチをするなかで有効性が発揮されると考えられる。5.多動児への行動療法適用後の行動変容についてフォローアップする場合には、同一条件下での健常児との相対的な比較において検討することも、その治療をより厳密なものにするために必要なことと考えられる。
- 1978-12-15
著者
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