多動児の行動変容に関する研究(1)
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概要
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本研究は、精神遅滞を伴う多動児に対してオペラント条件づけ法を適用し多動行動の減少と多動行動に伴う行動特徴の変容過程の分析を目的として試みられた。行動分析は、PEDO METERによる運動量の測定と観察される行動特徴の2つの側面からなされ、それはベースライン期間、条件づけ期間、フォローアップ期間を通して行なわれた。行動特徴は、4カテゴリー、20サブカテゴリー、77項目が観察された。治療は、第1ベースライン期、第1条件づけ期、第2ベースライン期、第2条件づけ期、フォーローアップ期からなっている。条件づけは、多動行動減少のために椅子に着席し4つの課題が与えられ、その課題への集中による静止時間の増大をはかる、という方法がとられた。着席による静止時間は、10秒から18分まで段階的目標をおき、その目標とする静止時間が2回連続して成功した時次の目標とする静止時間に移行された。強化因子は、目標とする静止時間が1回成功するごとに与えられ18分静止まで続けられた。第1ベースライン期間も含め第1条件づけ期間で18分の着席行動がとれるまでに54セッション、試行回数309回を要し、第2ベースライン期間を含め第2条件づけ期間では36セッション、試行回数85回を要した。そしてフォローアップ期間30セッション(約6週間)を含め120セッション、約7ヵ月を要した。条件づけの経過、PEDO METER測定、行動観察の結果から、およそ次のことが明らかとなった。1.本事例の場合には、多動行動に対しては遊戯療法よりオペラント条件づけ法が有効であった。2.対象児の示す多動行動は、多動という運動の量的側面のみならず行動異常の質的側面も含んでいる。しかし、質的側面は多動行動に関連したものが多く、多動行動の減少とともに大部分減少した。3.多動行動へのオペラント条件づけ法の適用は、運動量と行動異常の減少という症状の改善のみならず、治療者との関係、言語、コミュニケーション、遊具への関心、描画、環境認知、記憶の再生など全人格にかかわる好転的な変容の糸口をもたらした。4.本事例の場合、課題遂行を媒介として着席行動を段階的に条件づけていくことが有効であった、と考えられる。5.多動行動の治療は、対象児の行動変容の観察、測定と同時に、同一条件下での対象群児童との比較において進めることも、その治療をより厳密にするために必要ことと考えられる。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1976-12-15
著者
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