531 アクティブサスペンションによる弾性振動を考慮した鉄道車両のH∞制御
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概要
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近年、鉄道車両の高速化に向けて車体の軽量化が進められている。しかし、軽量化によって剛性の低下がもたらされることで車体の弾性振動が増大し、乗り心地を悪くさせることが問題とされてきている。ここで、乗り心地上特に問題となるのは車体の上下1次曲げ振動であり、人間が上下加速度に対して敏感に感じる4〜8Hzの周波数領域にその振動成分が大きく現れる。そこで本研究では、新幹線車両を想定した車両モデルを作成し、アクティブサスペンションによる振動制御系を設計した。このアクティブサスペンションにより、車体振動加速度を低減できるかどうかシミュレーションにより検討する。図A1に車両モデルを示す。このモデルは車体と前後の台車で構成され、車体の上下並進、ピッチング、1次曲げ、前・後台車の上下動の計5自由度を持ち、車体・台車間に制御用のアクチュエータが挿入されている。アクティブサスペンションの制御系設計には、H_∞制御理論を適用した。設計の際には台車枠上下変位、高低狂い、アクチュエータ発生力をそれぞれ前後同位相成分と前後逆位相成分に置き換えることで、システムを上下系(1次曲げ、上下並進、前後同位相成分)とピッチング系(ピッチング、前後逆位相成分)に分離した。こうすることで、上下系とピッチング系がそれぞれ独立に制御が可能となり、制御系設計が容易となった。コントローラ設計では、外乱から1次曲げ、上下並進およびピッチング振動加速度までの周波数特性において、人が不快と感じやすい周波数帯の振動成分を抑えるように重み関数を設定した。シミュレーションでは新幹線の高低狂いのパワースペクトル密度を数本の直線で近似したものからランダム波形を生成して車両への入力外乱とし、車体振動加速度を計算した。図A2に車体中央上下加速度PSDを示す。制御を行うことで1Hz付近の上下並進振動加速度の振動成分、7Hz付近の1次曲げ振動加速度の振動成分が低減されている。その結果、乗り心地レベルL_Tは車体中央で6.1dB改善した。また、車体のモード別加速度のRMS値から、1次曲げ振動加速度が半分以下に低減され最も制振されており、これが車体加速度の大幅な抑制につながっていることがわかった。これらの結果から、鉄道車両の乗り心地向上に、本研究におけるアクティブサスペンションが有効であることを示した。
- 2006-08-06
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