ベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》は異化されたのか
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概要
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本稿は、現代の音楽批評を批判的に検討し、過去の音楽批評を再考することの意義を問う一つの試みである。対象は、ベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》に関する批評であり、Th. W. アドルノの論考とクルト・フォン・フィッシャーの作品解説とを主要な手がかりとする。両者はともに、自分たちと同時代の作品受容のあり方に対しては、作品に人気があることと作品解釈が困難であることとの間に非整合性を認める点で一致している。しかしながら、19世紀の受容に関してはアドルノが無批判な賞賛を認めたのに対して、フォン・フィッシャーは意見には著しい対立があったとしている。彼らの同時代に対する批判が、過去に対する視点を前提としている点に鑑みれば、過去の認識のあり方にみられる両者の間の相違は看過できない。両者がともに過去を一面的なイメージで捉えていることを指摘し、過去の批評を検討することの意義を明らかにした。
著者
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