海外投融資における関連諸リスク要因のアイデンティファイ : 語義的特質について
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概要
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本研究の目的は,海外投融資に発生する紛争に顕著に貢献していると考えられているリスク要因の性質,およびリスク要因の解釈に使用されている用語を明確化することである。本研究においては,リスクの性質は海外融資および海外直接投資というそれぞれの異った投資タイプに密接が関連があるという前提に基いている。海外投融資におけるリスクは,「カントリー・リスク」(「ソバリーン・リスク」とも呼ばれる),あるいは「¢ポリティカル・リスク」と総称されており,それら二つの用語に明確な区別がなされていない。しかも,これら用語の無差別な使用に加えて,普偏的に認められた解釈がないということが,混乱さえ起し兼ねない。リスク要因とそれに直接関連する投資のタイプによって,これは用語の定義づけをすることは,リスク研究者,企業家に利益をもたらすものと考えられる。海外融資は,多くの場合,外国政府あるいは政府関係機関に対する信用の供与あるいは資金の移転であり,資産の所有や事業の経営に関与しない。一方,海外直接投資は,外国において資本財の取得であり,しかも可成りの部分の経営権を確保する。これらの比較において,リスクの発生要因の形態が異る。両者のリスク評価に概念的な相違がある。機関投資家による海外融資の場合,リスクの限度を測定することができる。更にリスクの評価基準は,融資のpriorityと融資先国のcreditworthinessによる。海外直接投資は,ホスト国の政治的な変革等によって,紛争に巻き込まれ,資産や潜在利益の損失に遭遇することがある。多国籍企業は,そのような政治的変革の発生確率を判定し,社会政治的不安定要素を実際にポリティカル・リスクに転換することにしている。社会政治不安定性は,将来の海外直投資における確率判断の重要な要件であり,リスク評価の概念的ガイドラインとして,意思決定に使用される情報となる。海外融資と海外直接投資のリスク評価における基本的な概念上の相違は,前者は融資返済のデフォルトにあり,後者は外国資産の収用と制限にある。海外融資のリスクは,借入国(債務国)のcreditworthinessに密接に関連しており,一方海外直接投資のリスクは,ホスト国の社会政治の安定度に関連している。これらを考察して,語義的特質から前者をカントリー・リスク,後者をポリティカル・リスクと称するのが便宜的であると考察される。
- 愛知学泉大学の論文