海外投資のポリティカル・リスク評価方法に関する一考察
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概要
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海外投資における経営者の意思決定は,ホスト国の政治ならびに経済状態に関する十分な分析から導き出された精度の高いリスク予測を基にして行われる。ホスト国内における外国資産の所有権や多国籍企業の自由な経済活動を脅かすようなリスク要因の存在が,意思決定の重要なdeterminantsとなる。したがって,どのようなリスクが潜在あるいは顕在しているかを調査し,それらをどのような方法で予測するかという問題が提起される。ポリティカル・リスクは,通常社会・政治的リスクと経済的リスクに分けられる。社会・政治的リスクは政治権力の交代や,社会不安によって誘発された社会的あるいは政治的混乱によって起ることが多い。しかも,sovereign riskであるという特徴がある。経済的リスクについては,統計数字の上からある程度精確に評価することができるが,社会・政治的なリスク要因は,政府の政策と密接に関連しているため,統計的分析を行うには困難を伴う。社会・政治的リスク要因は定性的性質のものが多く,応々にしてリスク度の測定は主観的なものとなる。ポリティカル・リスク評価においては,データの蒐集,分析そしてそれから得られた情報を経営者に提供し,投資に対する否定的要因発生の確率を予測することが目標である。ポリティカル・リスクの評価にしばしば用いられている分析方法を簡略化された枠組みに置き替えて考察を加えた。リスク分析は基本的に次の二通りの方法がある。一つは定量的分析(計量分析)法で,他は定性的分析法である。定量的分析法では,Check-list SystemとAdvanced Quantitative分析法がある。また,定性的分析法では,Fully Qualitative System,Structured Qualitative SystemおよびMultivariate Analytical Systemがある。これらの分析法について,実証的側面よりそれぞれの長所・短所に検証を加え,更に,定量的分析法によるリスク予測の限界と,定量的ならびに定性的分析の相互補完によるリスク評価の意義について考察したものである。
- 愛知学泉大学の論文