シロダモタマバエ(双翅目:タマバエ科)によってシロダモ(クスノキ科)の葉に形成されるゴール2型と九州におけるそれらの地理的分布様式
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概要
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タマバエ科のシロダモタマバエは、クスノキ科の常緑樹であるシロダモの葉にゴールを形成する。ゴールには2型があり、一方は葉の表面側がより突出しており(表型)、他方は葉の裏面側がより肥大している(裏型)。我々は、九州におけるそれぞれのゴール型の詳しい分布パターンを調べた。それぞれのゴール型はやや重なる側所的な分布域を持ち、九州北西部と中央部に2つの分布境界を持っていた。通常、1個体の寄主植物上には、どちらか一方のゴール型しか出現しないが、2型が共存している場合もあった。その場合は、同一葉上に一方の型が多数存在するなかに、他方の型がわずかにみられるというものであった。同じ寄主植物上で、異なるシュートや葉を、どちらか一方の型のゴールが占めている状態で共存しているようなケースは、まったくなかった。調査したシロダモはほとんど2倍体で、1個体のみ3倍体であった。同じ倍数レベルのシロダモに、異なるゴール型が出現していることから、植物の倍数性は、これらのゴール型の決定には関与していないと結論づけられた。今回明らかになったゴール2型の側所的な分布様式は、タマバエの行動学的、生態学的、遺伝学的な違いが、2型の発現に何らかの形で関与した結果であると推察される。このことは、シロダモタマバエが種分化のきわめて初期の段階に移行しているという可能性を示唆しているかも知れない。
著者
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