ヒト歯根膜細胞による石灰化ノジュール形成におけるレチノイン酸の抑制作用
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概要
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レチノイン酸(RA)は様々な組織の成長,分化および恒常性などに対して影響を及ぼすことが知られているが,歯根膜細胞(PDL)の分化に対するRAの影響は知られていない。本研究では,RAのPDLの石灰化ノジュール形成における影響を検討した。PDL石灰化誘導培地で培養することにより石灰化ノジュールを形成させ,Von Kossa染色を行った。RAの濃度依存的に石灰化が阻害され,RA濃度1μM以上では完全に抑制された。さらに石灰化誘導開始から最初の4日間のみRAを存在させた場合でも石灰化が完全に抑制されたが,培養後期にRAを存在させたところ抑制効果が減少したことから,RAは分化時期に依存して石灰化を抑制することが示唆された。RA受容体(RAR)αに対するアゴニスト(AM-580)はPDLの石灰化ノジュール形成を抑制したが,レチノイドX受容体に対するアゴニスト(メトプレン)では抑制されなかった。また,RT-PCR分析によってRAR-αはPDLに発現していることが示され,その抑制メカニズムにRAR-αが関与することが示唆された。また,この抑制はALP活性の抑制も伴っていることが分かった。PDLの石灰化ノジュール形成に関与することが知られているPDGF受容体-α,PDGF受容体-βおよびEGF受容体の発現に変化は見られなかった。これらの結果から,RAはPDLの分化の負の調節をしていることが示唆された。
- 東北大学の論文