「雪國」にみる『いき』に関わる日仏語の表現について : 駒子に関わる『艶』なる表現の比較分析
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概要
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川端の作品の中で最も有名なものの一つである「雪國」の中には、背筋がぞっとするような、しかしながら、これほどの美しく、艶やかな表現があるのかと思わせるに十分なものが数多く見られる。これは、まさに川端の真骨頂と言える技法でもあり、読み手にとっては己れの身体に流れる血液が逆流するかと思えるほどの衝撃を感じるのである。本稿はこの作品中の日本語での表現がフランス語という文学の世界では有数の表現力をもつ言語で如何に表されるのか、読者に如何なる世界を与えるのかを九鬼周造が著した名著「『いき』の構造」-殊に、「いき」の第一の微表は異性に対する「媚態」であるとする九鬼の論-を手掛かりとして、日本語とフランス語の両語の表現について比較分析しながら、川端が描いた駒子の《艶》なる世界の表現についての検討を試みたものである。