派生証券のマルチンゲール・プライシング
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概要
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株式などの危険証券を対象にした,その資産の将来価値が,その対象とする原資産の将来価格の動きに依存して決まる派生証券の価格付けについて,次の諸仮定(Jarrow and Turnbull [14],p.34)を置いて,考察する.仮定1市場は完全で,取引費用,ビッド・アスク・スプレッド,証拠金,空売り制限,税などの取引摩擦はない.仮定2市場参加者は,取引相手から債務不履行をこうむるなどのカウンター・パーティ・リスクに遭遇することはない.仮定3市場は競争的で,市場参加者は価格受容者として行動する.仮定4市場参加者は,少ない富よりも多い富を選好する.仮定5価格は,リスクなしで確実に利益を生むという裁定取引機会を排除するように,迅速に相互に調整される.派生証券の価格は,その派生証券の将来収益の,その派生証券が対象とする原証券の将来の価格変動を表わす確率の下での平均値を求め,それを安全証券の利子率で割引いた現在価値に等しいと一見思われるが,実はそうではない.ある確率が存在して,その下で安全証券をニュメレールとする原証券の相対価格(割引価格)の将来値の期待値を,その相対価格の現在値に等しくさせるとき,すなわち原証券の相対価格にマルチンゲール性をもたらすとき,その確率を同値マルチンゲール測度という.われわれは,派生証券のペイ・オフと全く同じペイ・オフを原証券と安全証券を適当に組み合せたポートフォリオを構成することによって複製できるという完備市場を想定する.この完備市場で無裁定であれば,派生証券の価格は,同値マルチンゲール測度の下で計算した派生証券の将来ペイ・オフの期待値を,安全証券の利子率で割引いた割引現在価値に等しいことを,複製ポートフォリオの構成法を提示しながら,証明する.逆に,同値マルチンゲール測度の下で,原証券と安全証券の市場で裁定取引機会がないことも明らかにする.本稿の組み立てはつぎのとおりである.1金融証券の市場価格のダイナミックス2資金自己調達的ポートフォリオ3同値マルチンゲール測度4無裁定条件5複製ポートフォリオの構成6派生証券の無裁定価格
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