イランのイスラーム統治体制と現代 : 文明の衝突の対立線を求めて (テーマ論文「一神教における対立と対話」)
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概要
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ホメイニー指導のもとで、イラン革命後に創られたイランの独自の特異なイスラーム体制は、近代西欧の諸価値観と、様々な面において対立する様相を持つ。ホメイニーが依拠し、展開するシーア派の教義の淵源の一つは、古代ギリシャのプラトンが説いた哲人支配に遡りうるが、このプラトンの哲人支配の思想は、中世西欧的価値観の一つとして、近代西欧の価値観との間で深い対立線をもつと同時に、さらに近代以降においても、全体主義と自由主義の対立、また、イラン国内における昨今の論争の対立の背後にも、その影を見出すことができる。しかし、この深い対立の溝は、近代西欧、とくに冷戦終結後、勝ち誇る自由主義と資本主義の影に潜む陥穽を我々に示唆し、気付かせるものでもある。例えば、ホメイニーならびにシーア派が説く理性は、人間の欲望(物質的欲求、すなわち物欲や権勢欲)を制御する役割を持つが、近代西欧以降の理性は、かかる人間の欲望を充たすための道具や手段としての性格を持っていること、また、この理性が多くの近代諸学の基礎に横たわっているが、今日の資本主義経済が(欲望を刺激して消費を誘う宣伝広告や技術革新など)人間の欲望を、常時刺激することによって存立する側面を持つことと相まって、昨今とみに、かかる道具や手段としての性格を強める方向へと駆り立てられがちであること、などである。
著者
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