細菌群集の時空間分布と物質循環をつなぐ : 細菌とメタ群集理論(<特集2>ミクロな世界からの新展開)
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概要
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最近の技術発展により、細菌群集の組成を高い解像度で検出することが可能になってきた。その結果、湖や海洋において、細菌群集の組成に空間的な不均一性と時間的な変動性が普遍的に見られることが明らかになりつつあり、現在、細菌群集組成の時空間動態の機構を理解することが求められている。そこで本論ではまず、細菌群集組成の時空間動態に関して、微生物生態学において広く受け入れられているeverything is everywhere仮説について解説する。次にこの仮説について、群集生態学の理論の一つであるメタ群集理論の視点から修正を加え、細菌群集組成の時空間動態と細菌群集が担う物質循環過程の関係に関して議論したい。ここで提案する新たな仮説は、「局所環境における細菌群集組成の素早い変化による群集レベルでの環境応答は、周囲の環境からの細菌個体の移動分散によって支えられ、その結果、細菌の担う物質循環過程の環境応答の規則性が生み出される」というものである。この仮説を、生態系の環境応答の予測という視点から捉えると、細菌個体の移動分散過程を考慮したメタ群集モデルを使えば、細菌の担う物質循環過程の環境応答をよりよく予測できると考えられる。そこで最後に、この仮説に基づく研究の一例として、海洋における有機炭素の鉛直輸送過程(生物ポンプ)の環境応答を、メタ群集モデルを用いて予測した研究を紹介する。
- 日本生態学会の論文
- 2007-11-30
著者
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