海洋における細菌群集の動態と有機物の動態との連関(<特集2>ミクロな世界からの新展開)
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概要
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海洋における細菌群集の動態にかかわる知見は、微生物生態学と生物地球化学のそれぞれの分野において、1980年代頃から断片的に蓄積されてきた。これらの知見により、細菌群集が有機物の同化と無機化の過程を通じて海洋生態系内部の物質循環に影響を与えているだけでなく、地表と大気を含めた地球表層全体の物質循環を駆動する生物ポンプに深く関わっていることが明らかになってきた。近年、分子生物学的手法の急速な進歩により、細菌群集の組成や有機物代謝を分子レベルで計測することが可能となってきた。これらの手法を適用した研究は、海洋細菌群集の系統分類群や有機物分解酵素をコードする遺伝子が非常に多様であることを明らかにしてきた。さらに、系統分類群あるいは遺伝子組成の時空間分布にパターンがあるという知見も報告され始めている。この時空間分布パターンは、細菌群集が異なる環境条件やその変動に応答した結果、形成されたものだと考えられる。特に、有機物分解酵素をコードする遺伝子の時空間分布は、有機物の代謝活性の定性的な分布を示唆している可能性がある。一方で、有機物の代謝に関与する細菌群集の生物量、活性といった定量的なパラメーターの時空間分布に関する知見は少ない。そのため、細菌群集による有機物代謝の量、速度の変動と、その支配要因に関しては、依然として不明な点が多い。細菌群集の動態と、物質循環過程における細菌群集による有機物代謝の機構の解明には、分子生物学的な手法をもちいた細菌群集構造の解析と、細菌群集の物質代謝量の測定を組み合わせた相補的な観測が必要であると考えられる。
- 2007-11-30
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