河川生態系の中の付着性細菌群集 : 河川連続体仮説の視点から(<特集2>ミクロな世界からの新展開)
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概要
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河川水中では、細菌は浮遊した単独状態より、何かに付着した状態で存在することが多い(大森2003)。この付着細菌は、自らが分泌した細胞外多糖類(extracellular polysaccharide)に包まれてコロニーを形成した状態で、その他の藻類や原生動物などと共に生息し、一つの群集を形成している。これをバイオフィルムという。河床の礫上にはバイオフィルムが発達し、その中の細菌群集は、河川生態系の食物連鎖や物質循環に関して重要な役割を持っている。河川は、上流から下流にかけて、生物にとっての生息地が劇的に変化するという複雑な構造を持っている。その環境の変化に沿って、細菌の利用可能な有機物も、粒状有機物(CPOM)から細粒有機物(FPOM)へと移り変わっていく。従って、利用する有機物と、各生息地の環境因子が共に変化すれば、細菌群集組成にも影響を与えることが予測されるが、その詳細についてはまだ明らかにされていない。本稿では、河川バイオフィルム内の付着細菌の群集組成とその機能に注目し、それらが流下方向で示す空間的な変化に関する仮説を、河川連続体仮説に沿って提唱する。次に、琵琶湖流入2河川において付着細菌群集について解析した研究例を報告し、この仮説を支持するかどうかを議論する。研究の結果、上流から下流にかけて基質環境は、ある一定の連続的変化を示した。しかし、それを利用する細菌群集の組成では、上流域と下流域との間に大きな違いがあるものの、上流から下流までの連続的変化は認められなかった。今回の測定方法では河川連続体仮説は支持されなかったが、残されたいくつかの可能性について議論し、今後の展望について述べる。
- 2007-11-30