幼児期における他者の偽りの悲しみ表出の理解
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概要
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本研究では,幼児期の「偽りの悲しみ表出の理解の発達」について検討した。見かけの感情と本当の感情を区別する能力については,Harris et al.(1986)などの先行研究から幼児期に発達することが知られている。しかし,より直接的に欺きの理解と関連する「偽りの悲しみ表出(本当は悲しくないにもかかわらず,悲しみを表出すること)」の理解についてはこれまでほとんど扱われてきていない。調査は4歳児と6歳児を対象とし,個別に仮想場面を用いて行なった。まず,主人公が感情を偽る状況を3枚の図版で提示し,「主人公の本当の感情」,「主人公の見かけの感情」,「他の登場人物が推測する主人公の感情」について,「喜び」,「悲しみ」,「普通」の3つの表情図から1つを選択,理由づけすることを求めた。課題は,偽りの喜び表出場面4課題(自己防衛的動機×2,向社会的動機×2),偽りの悲しみ表出場面4課題(自己防衛的動機×2,向社会的動機×2)の計8課題であった。その結果から,6歳児は4歳児よりも感情の見かけと本当を認識しているものの,向社会的な偽りの悲しみ表出の理解は6歳児にも難しいことがわかった。本研究から,自己防衛的動機による偽りの悲しみ表出の理解が幼児期に発達することが新たに示された。また,向社会的動機による偽りの悲しみ表出の理解は児童期以降に発達するという示唆が得られた。
- 2007-12-20
著者
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