舌がん患者の抱える多重的問題と生活変容プロセスに関する研究
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概要
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本研究は,手術療法を受けた舌がん患者32名を対象として,多重的問題ならびにこれを経験する頻度と社会環境との関連性に焦点を当てた半構造化面接を実施し,得られた資料を質的帰納的に分析した。そしてこの分析から,社会復帰を果たした患者の機能低下,ボディイメージの変化と社会環境との関連性を包含した多重的問題に焦点を当てた生活変容プロセスを理論化した。舌がん患者の抱える多重的問題は,機能低下,ボディイメージの変化そのものによる問題と社会環境における対人関係との相互作用を包含しており,各環境における中核的問題は基盤的環境,周辺的環境,職務的環境という社会環境の拡大とともに変化した。基盤的環境における中核的問題は,《世帯構成の差異》から摂食・嚥下・味覚機能低下にまつわる4つの食生活困難モデルが導かれた。また患者がこの問題を認識する頻度は,社会環境の拡大とともに低下した。そして活動拡大に伴う周辺的環境,職務的環境における中核的問題は,《社会復帰背景の差異》から器質性構音・音声機能低下にまっわる3段階から構成される会話段階モデルとして示された。また患者がこの問題を認識する頻度は,環境の拡大とともに高まった。さらにそれぞれの《環境移行期》における中核的問題は,ボディイメージの変化にまつわる3つの局面モデルが導かれた。また患者がこの問題を認識する頻度は,各環境移行期に最も高まった。多重的問題を抱える舌がん患者のQOLは,社会環境の差異や経時的移行により内容が異なり,その関連要因にも違いがあることが示唆された。
著者
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