Cat in the Rain : 「物語」と「描写」(岸英司名誉教授追悼記念号)
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概要
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Hemingwayの短篇"Cat in the Rain"は,イタリアのあるホテルに滞在するアメリカ人夫婦の不和や不毛さを扱った作品であると言われている。そのような考え方に異論があるわけではないが,テクストを詳細に読むと,夫婦間の問題というより,際立っているのは,アメリカ人妻の疎外感や閉塞感のように思われる。夫との関係のみならず,外国に滞在するたった2人のアメリカ人という二重の要因による彼女の疎外感は,テクストそのものの短さ,また,そのなかで扱われている1日にも満たない時間の短さと空間の狭さと相まって,彼女に徐々に深いアイデンティティーの危機感を抱かせることになる。小論では,このテクストを詳細に読むことにより,Chatmanの「描写は物語に仕える」という言葉を証明するかのような描写に焦点をあて,アメリカ人妻の苦悩を明らかにしてみたい。
著者
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