ジェンダー平等再考 : 多元主義の観点から
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概要
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ジェンダーに関する規範理論と実践はジェンダー平等の概念と不可分であるが、ジェンダー平等をどのように概念化するのがふさわしいかは社会の歴史的状況によって異なる。本稿は、とりわけ先進諸国において過去30年ほどの間に顕著に現れてきた様々な多元主義状況、なかでも近年重要性を高めてきていると言われるワーク・ライフスタイル選好にかんする個人間の多元性に着目し、現代にふさわしいジェンダー平等の概念はどのようなものかを検討するものである。まず、このような多元性についてのこれまででもっとも包括的な議論である、キャサリン・ハッキムの選好理論をとりあげ、日本においても近年、この選好理論を支持するデータが得られつつあることを見る。次に、このような現代的状況にふさわしいジェンダー平等の概念として、多元主義的ジェンダー平等の概念を素描する。ジェンダー平等の多元主義的概念化とは、人々のワーク・ライフスタイル選好の根幹にジェンダー関係をめぐる世界観があることに着目し、これらの異なったジェンダー的世界観を生きる人々の間の平等を構想するものである。これに対しては、従来のフェミニズムの立場からいくっかの批判が予想される。ここでは主な批判として、「選好」に基づく概念化に対する批判、および多元主義的概念化に対する批判(特定のワーク・ライフスタイルモデルの優越性や不適切性の指摘、および統計的差別問題の指摘)を取り上げ、それぞれ妥当性を検討する。最後に、多元主義を真に可能にする社会的意味世界の構築という観点から、本稿で素描されたジェンダー平等概念にもとつく規範的社会理論がとりうる方向性を展望する。
著者
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