山地傾斜地の放牧草地における土壌塩基の分布と牧草の塩基組成 : I.放牧草地における土壌塩基の分布
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概要
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東北地方に典型な山地傾斜地の放牧草地における土壌の塩基分布を精密調査し,施肥管理技術確立のための基礎資料を得ようとした。調査は北上山地に位置する外山と区界放牧草地で行い,各放牧草地において4月下旬から5月上旬の施肥前に,傾斜度の異なる三地区から表層土壌(0〜10cm)を採取した。採取点数は各地区49点で,採取土壌は乾燥,篩別した後,置換性K,CaおよびMgの定量を行った。1.放牧草地における土壌のK含量は斜面の傾斜度によって異なり,緩傾斜面のそれは急傾斜面と比べ著しく高かった。これは緩傾斜面にふん尿還元が集中しているためで,これらの地区は明らかに加里過剰であった。2.K分布の変動係数は30〜40%で大きかったが,Ca分布の変動係数と比べるとむしろ小さかった。そのため,長期間放牧に利用されていれば,一定面積へのふん尿還元は比較的均一に分配されているとみられた。3.未耕地土壌と比べ,放牧草地土壌のK含量は急傾斜面においてもかなり高く,年間ha当り60〜120kg(K_2O)の通常の加里施用でも,長年にわたれば加里集積が生じていることを示した。4.CaおよびMg含量は緩傾斜面で高い傾向にあったが,傾斜度によるCa含量の相違はそれほど大きくなく,主としてふん還元頻度の影響とみられた。未耕地土壌と比べると,放牧草地土壌のCa含量は全地区で,またMg含量は急傾斜地でかなり低く,未耕地よりも放牧草地で石灰,苦土の溶脱量が大きいことを示した。
- 日本草地学会の論文
- 1980-01-31
著者
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