山地傾斜地の放牧草地における土壌塩基の分布と牧草の塩基組成 : II.牧草の塩基含有率とそのバランス
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概要
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第1報に報告した放牧草地において,春季のオーチャードグラスの塩基含有率と土壌の塩基含量との関係を検討し,グラステタニー発生予防のための安全な牧草中Mg含有率とK/(Ca+Mg)比を維持するための施肥対策を明らかにしょうとした。1.オーチャードグラスのK含有率は土壌のK含量と密接な関係があり,土壌の置換性K含量約13mg/100g乾土が欠乏限界量(牧草K含有率約2%)とみられ,K含有率2〜3%が適量とすると土壌K含量は14〜19mgが必要と推定された。しかし,放牧草地の加里分布の不均一性から,土壌K含量21〜24mg程度は必要であり,この場合K含有率は3.2〜3.6%となるとみられた。2.オーチャードグラスのMg含有率は土壌の置換性K,Ca含量と弱い負相関が認められたが,置換性Mg含量とはその含量が全般に高かったため相関は得られなかった。また,Ca含有率と土壌の置換性K,Ca,Mg含量との間にはいずれとも相関は認められなかった。3.適当な加里施肥と十分な苦土資材を施用すれば,春季においてもオーチャードグラスのMg含有率をKEMPの限界値0.2%以上に増大できるととが示された。4.オーチャードグラスのK/(Ca十Mg)比はそのMg含有率の増大によってかなり低下した。しかし,同比をKEMPらの2.2以下にするためには土壌の置換性K含量を20mg以下にせねばならず,この場合には加里分布の不均一性から加里欠乏地点が出現する危険があった。そのためオーチャードグラス主体のイネ科放牧草地でK/(Ca+Mg)比を2.2以下にすることは極めて困難であり,マメ科牧草との混播が必要であった。
- 1980-01-31
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